床下エアコンは快適?
後悔しないために知るべきメリット・デメリット・施工時の注意点

執筆日:2025.05.22 更新日:2025.05.28

床下エアコンとは、床下(基礎部分)にエアコンを設置し、床下を利用して暖気を各居室に送り出す暖房方式です。高断熱高気密住宅ではこれだけで暖房がまかなうこともできるので全館空調の暖房版として使われる場合も多くあります。

一般的なエアコンや床暖房と違い、家電メーカーのオフィシャルな施工マニュアルがないので、設計や施工方法に不安な方も多いと思います。この記事では、床下エアコンについて専門的な施工の目線も交えながら解説をしていきますので参考になれば幸いです。

目次

床下エアコンを含むさまざまな冷暖房器具の特徴

床暖房とは

床暖房は、ヒートポンプで熱を作る温水式または電気で直接温める電気式があり、それを床材の下に敷設して、輻射熱により居住空間を暖めます。
床暖房は床材に比較的高い熱が当たるため、床暖房専用の床材を使用する必要があります。
輻射熱で体を温めるので快適性が向上します。
ただし、故障時の対応も導入時に検討しておくと良いでしょう。経年に伴う故障の場合、温水式は配管や熱源機(給湯器)の交換が、電気式はパネルや床材の張り替えが必要になる場合があり、いずれも大がかりな工事になり費用がかさみます。

床暖房の仕組み

床下エアコンとは

床下エアコンは住宅の基礎部分を使い各部屋に暖気を送り、住空間全体を暖めます。
ただし高断熱高気密住宅である必要があります。
室内の暖かさをしっかりと保ち、エアコン一台で家じゅうを効率よく暖めるためには、断熱性と気密性が高い住宅との相性が抜群です。
床下エアコンは市販のエアコンに少し改良を加えて、一台床下に設置し床にガラリをつけるだけなのでコストがそれほどかかりません。
一台で居住空間全体を暖めることができます。
送風方式は、床のガラリからゆっくり暖気が上がるので、エアコンの温風が直接顔に当たることで生まれる乾燥感も感じにくくなります(エアコンのドライヤーの熱風が顔に当たるような感じ)。
床下エアコンは、床面がほんのり暖かくなるので、頭寒足熱という体にやさしい暖房の仕組みです。
また、床下に暖気を送りますが、高温にはならないので、床材の制限もありません。ただし、無垢材の伸縮は無垢材の特性として避けられないのでお客様に丁寧な説明が必要です。
故障時もエアコンの修理、取り換えで済みます。

床下エアコンの仕組み

全館空調(セントラル空調)とは

全館空調とは、住宅全体を一括して冷暖房できるシステムです。
特に、高断熱・高気密とまではいえない一般的な性能の住宅では、冷暖房の効きが不安定になりやすいため、全館空調のようなパワーのあるシステムが必要になるケースもあります。

例えば、断熱等性能等級4など、国の基準を満たす水準であっても、冬場に熱が逃げやすかったり、部屋ごとの温度差が大きくなったりすることがあります。
そのため、空間全体をしっかり暖められる強力な空調設備が選ばれることがあるのです。

ただし、高出力なシステムほど、設備やダクトの工事が大掛かりになる傾向があり、初期費用や電気代、メンテナンスコストも高くなる点は、検討時に注意が必要です。

全館空調の仕組み

床下エアコンのメリットまとめ

まとめると、床下エアコンの、床暖房とセントラル空調との比較したメリットは

  • エアコン一台で居住空間全体を暖められる(床暖房のような効果が得られる)
  • 初期費用が少なく、メンテナンスも楽である
  • セントラル空調や壁掛けエアコンと比べて温風が直接肌にあたりにくい

となります。
このように床下エアコンは、一般エアコン、床暖房、全館空調と比べて費用・快適さにおいてメリットが多い暖房方式です。

床下エアコンここが心配

一方で床下エアコンには以下のような心配のご相談がよくあります。
解説を加えながらご紹介していきます。

暖房の立ち上がりが遅い?

一旦床下を温めてから居住空間に送風する仕組みのため、暖気を体感するまでの時間は一般のエアコンよりは時間がかかります。
よって、冬が近づいて少し寒くなったころからエアコンをつけて24時間連続運転することを推奨します

冷房は使えない?

冷気は比重が重く下に溜まっていくため、床下から送風しても、床下が冷えるだけで、室内に冷気が上がりません。また、結露の問題もでてきます。床下エアコンは暖房専用で使う方が多いですが、床から室内に送風する床ファンを利用することで冷房も利用される方が最近増えてきました。ただし風量の小さいファンだと冷気を送り切れないので注意が必要です。

床下の冷気をファンで部屋に浸透させる

  • 出典:株式会社 マーベックス
  • 出典:株式会社 マーベックス

居室同士のプライバシーが守りにくい(音漏れの問題)?

エアコンは、風を送りまたエアコンに戻す(リターン)という空気の流れをつくる必要があります。居室エアコンの場合は居室内で空気を回せばいいのですが、床下エアコンの場合は、居室からエアコンのある部屋まで空気を戻さなければなりません。そのため居室とエアコンのある場所の間にある壁が邪魔になります。それを解決するため、壁や扉に通風させるためのガラリの設置が必要になります。空気が通るので、音も多少聞こえます。
居室に完全密閉のプライバシーを求める方は、一般的な壁掛けエアコンを居室に設置する方法が相応しいでしょう。

基礎空間にシロアリ被害が起きやすい?

冬でも基礎空間が快適な温度なため、シロアリが増殖しやすいと思われがちですが、反対です。常にエアコンの風が届く乾燥状態なので、シロアリ被害は起きにくいです。

参考:しろあり保証会社が条件とする、基礎内の空気循環

出典:しろあり保証1000 joto基礎断熱工法

エアコンのメーカー保証がない?

床下エアコンは、市販の壁掛けエアコンを床下に吹き出すように設置しますので、その時点で保証対象外とするメーカーが一般的です。特例で保証対象にしているメーカーもあります(工務店独自で保証をつけている会社もあります)。

床下エアコン施工時に気をつけること

床下エアコンを施工する際は、施工箇所の気密性やセンサーが正常稼働することが非常に大事です。

エアコン周りの気密

吹き出し口を床下に向け、エアコンと床材に隙間がでないような施工を行います。これは吹き出した暖気が床下を通ってガラリから暖気が上がるための工夫です。エアコンと床材の間に隙間があるとそこから暖気が上がってしまい、ガラリから暖気が出にくくなります。

床下エアコンの施工例

エアコンのセンサーをワイヤードリモコンに切り替える

エアコンの室内機には温度を感知し、エアコンをコントロールするためのセンサーがついています。なので、床下に設置すると、居室ではなく床下の温度を感知してしまうため室温調整が難しくなります。そこで、床下エアコンを導入する際は、エアコンと直接線でつないだワイヤードリモコンというものを使います。このリモコンは壁に固定してつけるもので、そうすることで室内の温度を感知させてエアコンの動きをコントロールします。ただしメーカーによっては壁付のワイヤードリモコンにセンサーがついていないタイプもあるのでセンサーがついているかどうかの確認をしましょう。また、一般的には室内機からワイヤードリモコンのセンサーに切り替えをするための作業が必要になるのでしっかりとエアコンのマニュアルを確認してください。

ワイヤードリモコン(イメージ図)

ダブル断熱で基礎の断熱性を高める

基礎の一般的な断熱方法は「内断熱」とよばれ、基礎の内側に断熱処理をします。その場合地中を通って熱が逃げやすくなります。床面前面断熱敷設も効果的ですが、コスト面、施工面から考えると現実的ではありません。
そこで、基礎の内側と外側にダブルで断熱することで、地中を通って外部に逃げる熱を内断熱だけの時よりも床下エアコンの基礎断熱方法として効果的です。

基礎内断熱と基礎外断熱

基礎内断熱と基礎外断熱の比較

継ぎ目のない一体打設でシロアリ侵入と雨水浸水を防ぐ

床下エアコンを快適に使うためには基礎空間を清潔に保つ必要があります。
シロアリは0.6mmの隙間があれば侵入し、雨水はわずかな隙間からでも浸水します。

一般的なべた基礎の施工方法は、コンクリートの打設を「耐圧盤」と「立ち上がり」の打設を2回に分けて行うため、ここの打ち継ぎによる隙間が出来てしまいます。しかし、一体打設なら、そもそもその隙間が生まれない、つまり、シロアリの侵入も、雨水の浸水も、回避できるということになります。

まとめ

床下エアコンは、多くのメリットがあります。一方で気を付ける点や施工時のポイントもあらかじめ把握しておくことが大切です。

また、基礎断熱によって外気をしっかり遮断することが求められますが、基礎の内側だけでなく、外側からも断熱を施すことで、より効果が高まります。

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